粉瘤(ふんりゅう)、アテローマ、アテロームとは?
粉瘤(ふんりゅう)とは、皮膚の下にできる良性の腫瘍で、簡単に言うと「皮膚の中に袋ができて、垢や皮脂が溜まってしまった状態」のことです。この袋は、本来は皮膚から剥がれ落ちるはずの垢や皮脂が、何らかの原因で皮膚の中に閉じ込められてしまったためにできます。良性皮膚腫瘍の80%ほどが粉瘤です。
粉瘤は、男女の性差はなく、顔、頭皮、背中、耳などにできやすいですが、体のどこにでもできる可能性があります。初期の段階では、痛みやかゆみなどの症状はほとんどありません。 しかし、放置すると徐々に大きくなり、炎症を起こして赤く腫れたり、痛みを感じたりすることがあります。 また、細菌感染を起こすと、膿が出てくることもあります。
粉瘤は自然に治ることはなく、薬でも治せないので、小さくても手術が必要です。

粉瘤ができる原因
粉瘤ができる原因は、まだ完全にはわかっていませんが、主な原因として以下の3つが考えられています。
毛穴の詰まりや傷
皮膚は、常に新しい細胞が生まれて古い細胞が剥がれ落ちることで健康な状態を保っています。しかし、毛穴が詰まったり、皮膚に傷ができたりすると、このサイクルが乱れて、古い細胞が皮膚の中に閉じ込められてしまうことがあります。これが粉瘤の始まりです。
また、ウイルス性のイボ、虫刺され、ピアス、にきび跡などがきっかけとなってできることがあります。
ウイルス感染
ヒトパピローマウイルスなど、一部のウイルス感染が粉瘤の原因となることがあります。ウイルスが皮膚の細胞に感染することで、細胞の増殖が異常になり、粉瘤が形成されると考えられています。
体質
粉瘤ができやすい体質の人もいます。具体的には、脂性肌の人や、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を持っている人は、粉瘤ができやすい傾向があります。
これらの原因によって、皮膚の下に袋状の構造物ができ、その中に垢や皮脂が溜まって粉瘤が形成されます。
粉瘤の症状
出来始めの粉瘤は、わずかに触れると感じるしこりで、表面は皮膚の色~やや白みがかっています。放っておくと徐々に大きくなり、粉瘤の入り口から臭いがしてくることがあります。
無理に圧迫して内容物を押し出す方がおられますが、刺激となって炎症が起き、痛みや強い腫れを起こすことがあるのでお勧めしません。
デリケートゾーンの粉瘤
デリケートゾーンにも粉瘤はできます。デリケートゾーンは、皮膚が薄くて刺激を受けやすく、汗や分泌物も多い場所なので、毛穴が詰まりやすい場所です。そのため、他の場所に比べて粉瘤ができやすいと言えます。
デリケートゾーンにできた粉瘤は、下着との摩擦や、生理用品による刺激で炎症を起こしやすく、痛みやかゆみ、腫れなどの症状が出ることがあります。また、細菌感染を起こすと、膿が出てくることもあります。
自己処理などで傷をつけてしまうと、そこから細菌が入り込み、粉瘤になってしまうこともあります。デリケートゾーンに粉瘤ができた場合は、恥ずかしがらずに、早めに受診しましょう。
当院は女性医師が在籍しておりますので、お気軽にご相談ください。
粉瘤の治療(日帰り手術)
粉瘤は自然に治ることはなく、薬でも治せないので、小さくても手術が必要です。放っておくと、大きくなったり痛みが出ることがあるため、小さなうちに手術することをお勧めしています。
手術方法
当院では、くりぬき法を優先して選択しますが、粉瘤の状態によって決定します。
くりぬき法
2〜5mmのパンチ型のメス

紡錘切除縫縮
メスで粉瘤の大きさに応じて葉っぱ型に切開

手術方法の比較表
手術法 | くりぬき法 | 紡錘切除縫縮 |
---|---|---|
選択する目安 | ・3cm以下の粉瘤 ・炎症がある時 |
・3cm以上の粉瘤 ・再発を繰り返し、癒着が予想される時 |
メリット | ・傷が小さく治りが早い ・術後の痛みが少ない ・炎症がある時も行える ・手術時間が短く体への負担が少ない ・取り残すことが少なく、最初のリスクが低い ・癒着している場合も取りきることができる |
・再発のリスクが切除縫縮に比べると高い ・傷が大きくなる ・術後の痛みがくりぬき法と比べると多少ある |
手術時間 | 5〜10分 | 10分〜20分 |
抜糸 | 必要な場合と不要な場合がある(縫わずに終わった時) | 必要 |
当院の粉瘤の日帰り手術
保険適用の日帰り手術
手術は全て保険適用内で行うことが可能です。
短時間の手術
症状や大きさにもよりますが10〜20分で手術は終了します。
傷跡に配慮した手術法
当院ではくりぬき法を優先して手術を行います。
(状態によっては使えない場合もあります)
痛みに配慮した治療
手術前に局所麻酔薬をします。注射時には少し痛みを感じることがありますが、麻酔後に手術を行ないますので、手術中の痛みはありません。
症例写真


症例 | 粉瘤 |
---|---|
術式 | くりぬき法(皮膚皮下腫瘍摘出術) |
リスク | 出血、痛み、感染、再発、創部離開、瘢痕、ケロイド形成 |
手術の費用 | 9,200円(初診料・処方箋料・術前採血・病理検査料込) |


症例 | 粉瘤 |
---|---|
術式 | 切除縫合(皮膚皮下腫瘍摘出術) |
リスク | 出血、痛み、感染、再発、創部離開、瘢痕、ケロイド形成 |
手術の費用 | 9,200円(初診料・処方箋料・術前採血・病理検査料込) |
費用
治療方法 | 費用目安 |
---|---|
くりぬき法 紡錘切除縫縮 | 約10,000円〜15,000円 (自己負担3割の方) ※部位や大きさによって異なります |
※粉瘤の手術は保険適応です。
よくある質問
炎症がない粉瘤の場合、麻酔の注射時のお痛みのみになります。麻酔は採血よりもずっと細い針を使い、注射の前にアイスノンでしっかりとクーリングして痛みを緩和して行います。
またスタッフが、麻酔注射時に、肩や腰など麻酔部位から離れた患者様の体の一部をトントンと優しくタッチすることで痛みを逸らすなど、痛みがご不安な方も安心してお受けいただける工夫をしております。
炎症がある粉瘤の場合、局所麻酔が効きにくいことがあるため、麻酔をしっかりと多めに打っていきます。手術の途中でも痛みを感じる部位がありましたら、適宜麻酔を追加していきますので、我慢せずにお伝えください。
当院では、粉瘤の手術の8割以上を、小さな切開で行う「くりぬき法」で行っています。傷が小さいため、術後の痛みもごくわずかで、日常生活に支障が出ないことがほとんどです。
保険適用になります。
粉瘤は、鼡径部(足のつけね)や、お尻にもできやすいため、そのような部位の手術の日は、自転車でのご来院をお控えいただけますようお願いいたします。手術直後に、手術部位が擦れると、ガーゼ保護が外れてしまったり、出血、縫合糸が切れるなどのリスクがあります。
また、手術当日はシャワー・入浴など患部を濡らすことが不可になります。
手術を受けたいお気持ちでしたら、ホームページのウェブ予約から直接手術の日時予約をお取りください。
手術当日は、診療時間内で、ご予約時間の30分ほど前にご来院いただくと時間通りに手術を開始できます。また、手術をするかどうか迷われている、粉瘤かどうか診断してほしいという場合は、通常の診察を当日の順番予約でお取りいただき、ご来院ください。医師の診察後、当日手術が可能な場合もあります。
お子さまでも手術は可能です。18歳未満の方の場合、保護者の同意が必要となります。また、麻酔の注射に耐えられる、10分程度おひとりでじっとしていられることも必要となります。
不安や恐怖のために暴れてしまうと手術台から転落するなどの事故が起こる可能性があるため、じっとしていることが困難だが、手術を早期に行う必要があると判断した場合は、全身麻酔やスタッフの多い総合病院にご紹介する場合もあります。
顔は術後5日から1週間、体は術後1週間から10日での抜糸となります。