
疥癬について
疥癬(読み方:かいせん)は、ヒゼンダニというダニが皮膚に寄生することで強い痒みを引き起こす皮膚の病気です。
このダニは非常に小さく、肉眼ではほとんど見えません。皮膚の角質層に潜り込み、卵を産み付けることで増殖していきます。疥癬は人から人へとうつりやすく、特に共同生活を送る場(家族、寮、介護施設、入院施設のある病院など)で感染が広がりやすい傾向があります。
疥癬は放置すると、症状が悪化し、皮膚の感染症などを併発する可能性があります。早期に発見し、適切な治療を受けることが大切です。
当院では、疥癬の診断・治療を行っておりますので、気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。
疥癬の原因
疥癬は、ヒゼンダニというダニが人の皮膚に寄生することで起こります。このダニは、人から人への接触によって感染します。
具体的には、次のような場合に感染のリスクが高まります。
家族内での感染
同じ布団やタオルを使う、肌が触れ合うなど、日常生活での接触を通して感染することが多いです。
集団生活での感染
幼稚園、学校、寮、介護施設など、多くの人が生活を共にする場では、感染が広がりやすい傾向があります。
性行為による感染
性行為による皮膚の接触でも感染する可能性があります。
ヒゼンダニは、感染してから症状が出るまでに数週間かかることがあります。そのため、いつ、どこで感染したのかを特定することが難しい場合もあります。
疥癬の症状
手のひらや指の間、指の側面にできる疥癬トンネルと呼ばれる横穴を作ります。そのほか、赤いぶつぶつがお腹や胸、足、陰部などにみられ、激しいかゆみを伴います。
疥癬を放置すると、角化型疥癬と呼ばれる状態になり、疥癬が100万~200万匹と異常に増え、厚く殻のように角質やカサブタができることもあります。
疥癬の治療
内服薬
イベルメクチン(製品名:ストロメクトール)を体重や年齢に応じた必要量を内服します。2週間間隔で、2回内服します。副作用もあるお薬なので、内服できない方は外用薬を選択します。
外用薬
ヒゼンダニを殺すための駆虫薬を、全身に塗布します。1週間間隔で2回以上外用を行います。薬の種類や塗り方、塗布する期間は、医師の指示に従ってください。
抗ヒスタミン薬の内服
痒みを抑えるために、抗ヒスタミン薬を内服する場合があります。
ステロイド外用薬
炎症を抑えるために、ステロイド外用薬を処方する場合がありますが、ステロイドの長期外用で疥癬が増えやすくなるため、疥癬が認められる場合は、疥癬の治療を優先し、ステロイドの外用は中止します。
疥癬の治療薬は、皮膚に吸収されて効果を発揮します。そのため、決められた期間、正しく薬を使用することが重要です。また、家族など、一緒に生活している人がいる場合は、同時に治療を受ける必要があります。
治療後も、しばらくは痒みが残ることがあります。しかし、自己判断で薬の使用を中止せず、医師の指示に従って治療を続けることが大切です。
疥癬の予防・日常のケアについて
疥癬は、ヒゼンダニの感染によって起こるため、予防にはダニを寄せ付けない、そして他人にうつさないことが重要です。
- こまめな手洗い
外出後や食事前など、こまめに石鹸と流水で手を洗いましょう。 - 肌の清潔
シャワーや入浴で体を清潔に保ちましょう。特に、汗をかいた後や、人との接触後などは、早めにシャワーを浴びるようにしましょう。 - タオルや寝具の共有を避ける
家族であっても、タオルや寝具は共有しないようにしましょう。洗濯物は、熱湯で洗い、天日干しするか、乾燥機でしっかりと乾燥させましょう。 - 定期的な掃除
特に、寝室やリビングなど、人が集まる場所は、こまめに掃除機をかけ、ダニの繁殖を防ぎましょう。 - 早期発見・早期治療
皮膚に異常を感じたら、早めに皮膚科を受診しましょう。疥癬と診断された場合は、医師の指示に従って治療を行い、家族にも感染していないか確認してもらいましょう。
疥癬を放置するとどうなる?
疥癬は、適切な治療を行えば治る病気ですが、放置すると様々な問題を引き起こす可能性があります。
- 症状の悪化
強い痒みで眠れなくなり、日常生活に支障をきたすことがあります。また、掻きむしることで皮膚が傷つき、細菌感染を起こしやすくなります。とびひなどの皮膚感染症を併発すると、さらに治療が難しくなる場合もあります。 - 二次感染
疥癬によって皮膚のバリア機能が低下すると、細菌やウイルスが侵入しやすくなり、様々な感染症を引き起こすリスクが高まります。 - 精神的なストレス
強い痒みや皮膚の症状は、精神的なストレスや不安感につながることがあります。 - 他者への感染
家族や周囲の人々に感染を広げてしまう可能性があります。特に、高齢者や乳幼児など、抵抗力の弱い人に感染すると重症化しやすいため注意が必要です。
疥癬は早期に発見し、適切な治療を受けることが重要です。少しでも気になる症状がある場合は、早めにご相談ください。