
乾癬について
乾癬(読み方:かんせん)は、白いカサカサしたもの(鱗屑)を伴う境界が明瞭な盛り上がった紅い発疹が全身に出る病気です。日本人の約0.1〜0.3%がかかると言われており、決して珍しい病気ではありません。
しかし、その症状から「人にうつるのでは?」「不潔にしているから?」と誤解されてしまうことも少なくありません。
乾癬は、皮膚における免疫の異常によって起こる病気で、人にうつることはありません。また、不潔にしていることが原因で発症するわけでもありません。乾癬は慢性的な病気で、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴です。
適切な治療とスキンケアを行うことで、症状をコントロールし、日常生活に支障をきたさないようにすることが可能です。乾癬には、尋常性乾癬と呼ばれる紅斑のみの症状の方(乾癬の方の90%ほど)、爪の変形や関節炎を伴う場合もあります。
乾癬の原因
乾癬の原因ははっきりとはわかっていませんが、免疫の異常が大きく関わっていると考えられています。私たちの体には、外部から侵入してきた細菌やウイルスから体を守る「免疫」というシステムが備わっています。
乾癬の場合、この免疫システムが過剰に働き、自分の皮膚を攻撃してしまうことで炎症が起こり、皮膚が赤く盛り上がったり、かゆみが出たり、カサカサとしたものができたりするのです。
乾癬の発症には、以下のような要因が関わっていると考えられています。
- 遺伝的要因
乾癬の患者さんの約30%に家族歴があると言われています。 - 環境要因
ストレス、感染症、外傷、特定の薬などが乾癬の引き金になることがあります。 - 生活習慣
喫煙や飲酒、肥満なども乾癬を悪化させる要因となる可能性があります。
乾癬の治療
乾癬の治療は、症状の程度や範囲、患者様の生活スタイルなどを考慮して、適切な方法を選択します。残念ながら乾癬を完全に治す方法はまだ確立されていませんが、症状をコントロールし、寛解状態を維持することは可能です。
主な治療法としては、外用療法・光線療法・内服療法・注射療法の4種類があります。
外用療法
ステロイド外用薬
炎症を抑え、皮膚の赤みやかゆみを改善します。効き目が早く、乾癬の症状が強いときに集中的に使用することで症状を早く抑えます。
活性型ビタミンD3外用薬
乾癬による皮膚の異常な角化を抑制し、皮膚を正常な状態に戻します。効果がでるまでに時間がかかるため症状が落ち着いているときに使用することが多いです。
ステロイドと活性型ビタミンD3の合剤
乾癬は、症状が全身に及ぶこともあり、外用の手間・時間がかかることが難点でした。最近では、ステロイドと活性型ビタミンD3を1剤にまとめた合剤が、様々な形状で開発され、患者さまの負担を減らすことができます。ゲルタイプ、泡のフォームタイプなどは、頭皮や広い範囲に塗りやすくお勧めとなっています。
内服療法
PDE4阻害剤
乾癬の病態に関わるPDE4(ホスホジエステラーゼ4)の過剰な働きとそれに伴う炎症性サイトカインを抑制する内服薬で、皮膚の炎症を抑制します。内服開始後、嘔気や下痢など消化器症状、頭痛などの副作用が起こることがあるため、少量から少しずつ増量して維持していきます。乾癬による関節症状や、爪症状の改善も認められます。
また、腎機能低下のある方、妊娠中授乳中の方は内服できません。
レチノイド製剤(チガソン)
皮膚の細胞が過剰に作られることを抑えます。腎障害や催奇形性もあり、慎重な投与が必要です。
免疫抑制剤(ネオーラル)
免疫システムの働きを抑え、炎症を改善します。腎障害や高血圧をきたすなどの副作用があり、定期的な検査を行いながら投与します。症状が広範で、外用のみでは抑えられないときに使用されていますが、PDE4阻害剤や生物学的製剤の開発により、使用される頻度は減ってきています。
光線療法
PUBA療法(内服、外用を併用)、UVB、ナローバンドUVB、エキシマライトなどによる治療があります。当院では、病変部のみに照射できるターゲット型紫外線療法を用いており、患者さんの負担が少ない治療となっています。
生物学的製剤
生物学的製剤は、生物が作り出すたんぱく質をもとに作られた薬で、皮下注射や点滴で投与されます。体の免疫機能に関わる炎症性サイトカインの働きを抑えることで治療します。現在、乾癬に使用される生物学的製剤は、盛んに開発され数多く承認されています。
高額な治療費がかかり、全身性の副作用の管理が必要なお薬のため、希望される患者さまには大学病院等認定施設にご紹介させていただきます。
これらの治療法を単独または組み合わせて、患者様一人ひとりに最適な治療プランを立てていきます。治療の効果や副作用、日常生活における注意点などについて、詳しくご説明いたしますのでご安心ください。
乾癬の予防・日常のケアについて
乾癬は慢性的な病気であるため、再発を予防し、症状を悪化させないためには、日々の生活習慣やスキンケアが重要になります。
皮膚への刺激を避ける
- ナイロンタオルなど硬い素材のものではなく、柔らかいタオルを使いましょう。
- ゴシゴシこすらず、優しく洗いましょう。
- 熱いお湯は避け、ぬるめのお湯で洗いましょう。
- 石鹸をよく洗い流し、保湿剤をこまめに塗りましょう。
生活習慣の改善
- バランスの取れた食事を心がけましょう。
- 十分な睡眠をとりましょう。
- ストレスをため込まないようにしましょう。
- 適度な運動を心がけましょう。
- 禁煙・節酒を心がけましょう。
規則正しい生活
睡眠不足や不規則な生活は、免疫のバランスを崩し、乾癬を悪化させる可能性があります。毎日同じ時間に寝起きし、3食きちんと食べるように心がけましょう。
ストレスをためない
ストレスは乾癬の悪化要因の一つです。趣味やリフレッシュできる時間を持つなど、ストレスを解消する方法を見つけましょう。
保湿
皮膚の乾燥は、かゆみや炎症を悪化させる可能性があります。保湿剤をこまめに塗って、皮膚を保湿しましょう。
紫外線対策
紫外線は皮膚への刺激となり、乾癬を悪化させることがあります。日焼け止めを塗ったり、帽子や日傘を使用するなど、紫外線対策をしっかり行いましょう。
定期的な診察
症状が落ち着いている時でも、定期的に皮膚科を受診し、医師の診察を受けましょう。
これらのケアを継続することで、乾癬の症状をコントロールし、より快適な生活を送ることが期待できます。
乾癬の初期症状
乾癬は初期症状を見逃しやすい病気です。「ただの湿疹かな?」「乾燥肌かな?」と自己判断して放置してしまうと、症状が悪化し、治療に時間がかかってしまう場合もあります。
乾癬の初期症状は、以下のようなものがあります。
- 赤い斑点
皮膚に赤い斑点ができ、次第に盛り上がってきます。斑点の大きさは、数ミリから数センチまで様々です。 - 白いカサカサ
赤い斑点の上に、白いカサカサしたものができます。これは、皮膚の角質が厚くなって剥がれ落ちたものです。 - かゆみ
患部にかゆみを感じることがあります。かきむしってしまうと、症状が悪化することがありますので、注意が必要です。
これらの症状は、頭皮、肘、膝、腰など、体のどこにでも現れる可能性があります。また、爪に症状が現れることもあります。
初期症状は、湿疹や乾燥肌と似ているため、自己判断せずに、皮膚科での診療を受けることをおすすめします。早期に発見し、適切な治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、QOL(生活の質)を維持することができます。