
デュピクセントとは
デュピクセント(一般名:デュピルマブ)は、アトピー性皮膚炎の注射薬です。
従来の治療では十分な効果が得られなかった中等症から重症のアトピー性皮膚炎の患者さんに対して、炎症・かゆみ・皮膚バリア機能のいずれにもアプローチすることで、症状の改善が期待できます。
この薬は、アトピー性皮膚炎の原因のひとつである「IL-4」および「IL-13」というサイトカインの働きをピンポイントに抑制することで、炎症反応やかゆみを軽減します。その結果、皮膚の状態が改善し、良い状態を長く維持できるようになります。
デュピクセントは生後6ヶ月以上の患者さんから使用可能であり、今までの外用薬(塗り薬)や内服薬(飲み薬)だけではコントロールが難しかった方にとって、有効な治療法となり得ます。
当院では、医師による丁寧な診察のもと、デュピクセントの導入可否を慎重に判断し、適切な治療を提案しています。
デュピクセントの作用について
デュピクセントは、アトピー性皮膚炎の症状を引き起こす主な原因である「IL-4」および「IL-13」というサイトカインの働きを抑えることで、皮膚の炎症、かゆみ、バリア機能低下といった悪循環を断ち切る作用があります。
IL-4とIL-13は、免疫の過剰反応を引き起こすことで炎症を助長し、皮膚のバリアを壊してしまうことがわかっています。バリアが壊れると、アレルゲン(ダニやホコリなど)が皮膚内に侵入しやすくなり、さらに炎症とかゆみが強まるという悪循環が生じます。
デュピクセントはこの2つの物質の働きをブロックすることで、皮膚の内側に潜んでいた「かくれた炎症」にも作用し、根本的な改善を目指します。そのため、皮膚が目に見えてきれいになるだけでなく、かゆみの軽減や再発予防にも効果が期待できます。

デュピクセントの効果
デュピクセントは、これまでの治療で十分な改善が見られなかった中等症〜重症の患者さんにおいて、皮膚の炎症やかゆみの軽減、皮膚の見た目の改善といった効果が期待できます。
この薬剤は「炎症」「かゆみ」「皮膚バリア機能の低下」といったアトピー性皮膚炎の三大要因すべてに作用するため、より根本的な改善が望めます。実際に使用を開始すると、数週間でかゆみの軽減を感じる方も多く、症状の悪化を繰り返しにくくなるケースもあります。
さらに、皮膚の状態が安定することで、夜間の睡眠の質が向上したり、日常生活の活動範囲が広がるなど、生活の質(QOL)の向上も報告されています。また、自己注射が可能なため、通院回数が減り、生活に合わせた治療がしやすいという利点もあります。

デュピクセントの使用方法
デュピクセントは皮下注射で投与される薬剤です。
基本的には2週間に1回のペースで、医療機関またはご自宅で自己注射を行うことができます。初回は医師の管理のもとで投与し、その後は医師の判断により自己注射へ移行することも可能です。
投与量は年齢や体重によって異なり、成人では初回600mg(2本)を投与し、以降は300mg(1本)を2週間ごとに継続投与します。小児の場合は、体重に応じて200mgまたは300mgを2週または4週ごとに使用します。

自己注射の方法
自己注射の場合、太ももや腹部など決められた部位に注射を行い、注射器は冷蔵保存、使用前に室温へ戻すといった注意点を守る必要があります。注射の操作自体はシンプルで、安全設計が施されているため、初めての方でも慣れやすい仕様です。
自己注射の方法は、下記をご確認ください(外部サイト)
副作用
デュピクセントは安全性の高い薬剤とされていますが、副作用がまれに発生することがあります。以下のような症状が見られた場合は、すぐに医師へご相談ください。
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注射部位反応
腫れ・赤み・かゆみ・発疹など
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全身症状
関節痛、発熱、倦怠感など
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眼の症状
結膜炎(目やまぶたの赤み・かゆみ・乾燥など)
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口唇ヘルペス
唇や口のまわりに小さな水ぶくれや発疹
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アレルギー反応(過敏症)
息苦しさ、ふらつき、めまい、動悸
皮膚のかゆみや発疹
顔や手足のむくみ、しびれ、麻痺感など
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咳、発熱、息切れ、呼吸困難、血痰など
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寄生虫感染のリスク
処方できない方
デュピクセントは有効な治療薬ですが、すべての方に適しているわけではありません。以下のような条件に該当する方には、原則として処方できない、あるいは慎重な対応が必要になります。
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過去にデュピクセントの成分でアレルギー反応を起こしたことのある方
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生ワクチンの接種予定がある方
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喘息・慢性副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎・じんましんなど、他のアレルギー性疾患をお持ちの方
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寄生虫感染のある方(治癒するまでは使用を控える場合があります)
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妊娠中または妊娠の可能性がある方、授乳中の方
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ご高齢の方
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生後6ヶ月未満の乳児(適応外となります)
料金
デュピクセントの治療費は、保険適用となるため、自己負担額は加入している医療保険の内容や年齢、収入によって異なります。

高額療養費制度や各種医療費助成制度を利用することで、実際の自己負担額を大きく抑えることが可能です。
詳しくは下記をご確認ください(外部サイト)
導入の流れ
初診からのデュピクセント予約はできません。まずは、適応があるかどうか医師の診察と検査を受けていただきます。
※他院でデュピクセント導入済みの患者様
他院でデュピクセント導入済みの患者様は、医師の診断のもと、状況に応じて初診から処方することも可能です。事前の処方歴、病歴がわかりますよう紹介状をお持ちいただくようご協力をお願いいたします。
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初診
当日の順番予約をとって診察にお越しください。
現在の症状、今までの治療歴や使用薬剤を含めて丁寧に問診させていただき、治療の適応かどうかを診断します。
※費用に関しては、収入や各種助成制度が利用できるかどうかなど具体的な内容について、治療開始までにご自身でご確認いただくことがございますのでご了承ください -
治療開始日の決定・予約
診察の結果、お薬の適応と診断された方は、治療開始のご希望日に、デュピクセント治療開始日をご相談の上、院内でスタッフが予約させていただきます。
※デュピクセント治療開始日は、ウェブ予約ができません。診察時にご予約希望とお伝えください -
治療開始日
治療開始の予約日にご受診いただき、院内で注射の具体的な説明と実施を行います。初回のみ、または患者さんによっては2回目まで院内で注射を行います。
その後は、ご自宅での注射を継続できるように丁寧に注射のご指導をさせていただきます。
よくある質問
個人差はありますが、数週間でかゆみが軽減したと感じる方が多いです。継続的に使用することで、皮膚の状態が安定してきます。
初回は医師の管理下で投与を行い、その後は丁寧な操作説明を受けたうえで自己注射をスタートします。操作はシンプルで、安全性にも配慮された設計になっており、ご自宅でも安心して続けられます。
可能な場合もありますが、喘息や副鼻腔炎、妊娠中・授乳中などの状況によっては注意が必要です。必ず全ての治療歴を医師にお伝えください。
症状のコントロールができていれば、再発を防ぎやすくなります。ただし、自己判断で中止せず、必ず医師と相談のうえで治療方針を決定しましょう。
生後6ヶ月以上の小児に対しても使用が認められており、体重や症状に応じた投与が可能です。
リーフレットについて
下記よりデュピクセントのリーフレットをご確認いただけます(提供:サノフィ株式会社)。