
当院のあざ治療
当院では、あざに対して保険適応となっている、ピコレーザー(Picoway)、Qスイッチルビーレーザー(QplusR)を使用しています。
早期に治療を開始するメリットとして、皮膚が薄く、あざに対するレーザーの治療効果が高いこと、あざの範囲が成長する前で比較的小さいうちに開始できること、痛みの記憶が残りにくいことなどから、自然消退するものを除いて、小学校進学前の早期治療開始をお勧めしています。
小児の青あざ(異所性蒙古斑)、茶あざ(扁平母斑)のレーザー治療に保険適応で対応しております。
広範囲のため全身麻酔を要する場合は、総合病院に紹介させていただきます。
また、赤あざは対応していませんので、ご了承ください。
赤ちゃん・子どものあざについて
赤ちゃんや子どもの皮膚にあるあざには、生まれつき存在する「先天性」のものと、成長の過程で見られる「後天性」のものがあります。多くは良性で経過を観察するだけで問題ありませんが、稀に治療が必要なケースもあります。
あざには色によって種類が分類され、青・茶・赤といった色の違いが見られます。例えば、蒙古斑のように自然に消えるものもあれば、血管腫や母斑のように大きくなったり色が濃くなったりするケースもあります。なかには見た目の印象から心理的な影響を心配されることもあります。
あざの種類や症状に応じて、経過観察で済むもの、レーザー治療が必要なものなど対応が異なるため、気になる場合は皮膚科での診察をおすすめします。
赤ちゃん・子どもにあざができる原因
赤ちゃんや子どもにあざができる原因は、大きく分けて先天性(生まれつき)と後天性(生後にできる)があります。
先天性のあざ
胎児期の皮膚や血管の形成過程に異常が起こり、皮膚の色素や血管の一部に変化が現れることであざになります。蒙古斑、太田母斑、血管腫などが代表例です。
後天性のあざ
外部からの刺激や打撲、皮膚の発達段階で生じる変化によってできるものです。表皮母斑や一部の血管腫などが該当します。
なお、遺伝的な要因が関係することもありますが、多くは原因不明で自然にできることがほとんどです。大半のあざは良性ですが、成長に伴い変化する場合もあるため、気になるときは診察を受けると安心です。
赤ちゃん・子どものあざ治療について
あざの治療は、種類や部位、年齢、成長とともに変化する可能性などを総合的に判断して決定します。自然に薄くなるため経過観察で良い場合も多いですが、なかには治療が必要なものもあります。
治療の時期は、あざの種類や状態にもよりますが、早期治療ほど治療回数も少なく治療効果が良いことが多いため、新生児や乳児期など早めに治療を開始することが推奨されます。しかし、あざの状態によっては自然経過で薄くなる場合や、レーザー治療に抵抗性のあざもありますので、まずは医師に相談してください。
主な治療方法
レーザー治療
色素性母斑や血管腫などに対して効果的で、皮膚の深さや状態に応じてレーザーの種類を使い分けます。
外科的切除
大きさや形状により、成長後に手術を検討することがあります。
内服・外用薬
血管腫の一部に対して、内服薬(β遮断薬)を使用するケースもあります。
子ども・赤ちゃんのあざの種類
赤ちゃん・子どものあざにはさまざまな種類があり、色や発生の仕方によって分類されます。
あざの種類によって自然に消えるものもあれば、治療を要するものもあるため、正確な診断がとても重要です。
-
青あざ
真皮深層に色素が沈着してできるあざで、生まれつきあることが多い。(蒙古斑、太田母斑、青色母斑など)
-
茶あざ
メラニン色素の沈着によるもので、見た目がほくろに似ている場合もあります。(扁平母斑、表皮母斑など)
-
赤あざ
血管の増殖や拡張によって皮膚が赤く見えるタイプで、成長とともに変化することがあります。(乳児血管腫、ポートワイン母斑など)
青あざについて
青あざは、皮膚の深層(真皮)にメラニン色素が沈着することで、皮膚の表面から青〜青黒く見えるあざです。赤ちゃんや子どもに比較的よく見られるタイプで、あざの位置や大きさ、色味、経過により複数の種類に分類されます。
以下に代表的な青あざを詳しく紹介します。
太田母斑(おおたぼはん)
太田母斑は、生まれつきある場合と、小児期に発症する場合がありますが、多くは思春期頃に増悪することが多い、顔に青や灰色がかったあざが現れる皮膚疾患です。特に、まぶたや頬、額、こめかみなど目の周囲に発生することが多く、時に白目(強膜)にも色素沈着が見られます。左右対称ではなく、片側性がほとんどですが、稀に両側に生じることもあります。
自然に消えることはほとんどなく、年齢とともに色が濃くなることがあります。見た目の影響が大きいため、学童期〜思春期以降にレーザー治療(ピコレーザー、Qスイッチレーザー)を行うことが一般的です。治療回数は複数回に及ぶことが多いですが、改善が期待されます。
使用するレーザー機器(保険適応)
異所性蒙古斑(いしょせいもうこはん)
蒙古斑はお尻や背中の中心に黄色人種では出生時にほぼ100%存在しますが、ほとんどは小学校入学前までに自然に消失します。
一方、異所性蒙古斑は通常とは異なる部位、たとえば腕、脚、肩、顔などにあざが現れる状態を指します。通常の蒙古斑と同様に色は青〜青紫で、大きさや濃さには個人差があります。部位によっては目立ちやすく、自然消退しにくいこともあるため、必要に応じてレーザー治療を検討します。
使用するレーザー機器(保険適応)
青色母斑(せいしょくぼはん)
青色母斑は、メラノサイト(色素細胞)が皮膚の深い部分に限局して増殖することで発生するあざです。小さな青黒い結節として現れ、境界は比較的明瞭です。出生後しばらくしてから気づかれることが多く、顔、手背、手足などに好発します。
大きさは数mm程度が多く、単発でみられますが、まれに多発することもあります。通常は良性ですが、まれに「悪性青色母斑」という皮膚がんに変化する可能性もあるため、定期的な観察が重要です。診断が難しい場合や見た目が変化してきた場合には、切除生検や外科的切除が行われることもあります。
茶あざについて
茶あざは、皮膚におけるメラニン色素の増加や色素細胞の異常により、褐色や濃い茶色に見えるあざです。皮膚の浅い層(表皮)や深い層(真皮)に色素が沈着することで生じ、色調や輪郭、発生時期はさまざまです。
以下に代表的な茶あざの種類について詳しくご紹介します。
扁平母斑(へんぺいぼはん)
扁平母斑は、境界が比較的明瞭で、均一な薄い茶色の色素斑です。生まれつき存在する場合(先天性)と、成長とともに出現する場合(後天性)があり、顔・腕・胴体など身体のさまざまな部位に生じます。
大きさや数には個人差があり、単発のこともあれば多発するケースもあります。遺伝的素因は不明ですが、ごくまれに神経線維腫症などの遺伝性疾患の一症状として出現する場合があります(カフェオレ斑が6個以上ある場合など)。
自然に消えることはほとんどなく、見た目が気になる場合にはQスイッチレーザーなどでの治療が検討されます。ただし、効果が出にくいこともあり、完全除去が難しいケースもあります。
使用するレーザー機器(保険適応)
ベッカー母斑(遅発性扁平母斑)
ベッカー母斑は、思春期以降に出現する後天性の茶あざで、通常は片側の肩や胸、背中などに大きく広がることが多いです。この母斑の特徴は、色素沈着に加えて毛が濃くなる(多毛)ことです。
このあざは、アンドロゲン(男性ホルモン)の影響を受けるため、思春期に悪化・顕在化しやすいとされています。通常は良性で、健康上の問題はありませんが、美容面での悩みを抱える方が少なくありません。
治療にはレーザーを使用することがありますが、再発や色素沈着のリスクもあるため慎重な対応が必要です。根治が難しいケースもあり、医師と相談しながら治療方針を決めていきます。
表皮母斑(ひょうひぼはん)
表皮母斑は、表皮の一部が限局的に異常増殖してできる先天性のあざで、生後間もなくから出現します。色調は茶色~黒褐色で、表面がざらついたり、時にイボ状に盛り上がったりすることがあります。片側の体幹、腕、脚などに縦に沿って分布するのが典型的です。
成長とともにあざが大きくなったり、毛が生えたり、皮膚が厚くなったりすることもあり、炎症を繰り返すこともあります。稀に、神経系や骨、筋肉に合併症を伴う「表皮母斑症候群」の一部として認められることがあり、注意が必要です。
治療はあざの大きさや場所、症状の程度によって異なりますが、見た目の変化や炎症が気になる場合には外科的切除やレーザー治療が行われます。
赤あざについて
赤あざは、皮膚表面またはその下の血管の異常な拡張・増殖によって、皮膚が赤〜紫色に見える状態です。生後間もなくから確認されるものが多く、自然に消えるものと、治療が必要なものとがあります。見た目の印象が強く、心理的・社会的な影響を及ぼすこともあるため、正確な診断と経過観察が重要です。
乳児血管腫(いちご状血管腫)
乳児血管腫は、生後2〜4週間頃から出現し、数ヶ月かけて急速に大きくなる血管の良性腫瘍です。皮膚から盛り上がり、鮮やかな赤色で「いちごのような外見」をしていることから「いちご状血管腫」とも呼ばれます。
最も発生しやすい部位は顔面、頭部、体幹ですが、体のどこにでも生じる可能性があります。約80%以上が5〜10歳までに自然に消失します(退縮期)が、完全に元の皮膚状態に戻るわけではなく、皮膚のたるみや色素沈着が残ることもあります。
また、目のまわりや口元、気道近くなど、機能に関わる部位や急速に増大するケースでは早期の治療が必要です。治療にはβ遮断薬の内服が一般的であり、必要に応じてレーザーや手術が選択されます。
サーモンパッチ(新生児斑)
サーモンパッチは、新生児の約30〜40%に見られる毛細血管の拡張による淡い赤みのあざです。額、上まぶた、鼻、上唇、うなじなどに見られ、泣いたときや入浴時などに色が濃くなる特徴があります。
これは病的なものではなく、生後数ヶ月〜1年以内に自然に目立たなくなることがほとんどです。医学的な治療は不要で、経過観察で十分です。額やまぶたのサーモンパッチは比較的早く消える一方で、うなじにできるもの(ウンナ母斑)はやや残る傾向があります。
ウンナ母斑(うなじの赤あざ)
ウンナ母斑は、サーモンパッチの一種で、特にうなじから後頭部にかけて見られる赤あざを指します。毛細血管の拡張が原因で、境界が不明瞭な薄い赤色のあざとして現れます。
新生児期から存在し、泣いたときや体温が上昇したときにより濃く見えることがあります。通常は学童期までに自然に薄くなるため、治療の必要はないことがほとんどですが、成人期まで持続する場合もあります。
美容的な理由で治療を希望する場合には、レーザー治療(パルスダイレーザーなど)が選択肢になりますが、皮膚が薄い部位では複数回の治療が必要となることもあります。
ポートワイン母斑(単純性血管奇形)
ポートワイン母斑は、生まれつき存在する毛細血管の構造的異常(血管奇形)により、皮膚の表面が濃い赤~紫色に変色している状態です。顔や首、手足に生じることが多く、時間の経過とともに色が濃くなったり、皮膚が厚くなったり、しこりのように変化することもあります。
自然に消えることはなく、外見上の問題が大きいため、幼少期からの早期治療が望ましいとされています。最も有効な治療はレーザー(パルスダイレーザー)で、早い段階から複数回照射を行うことで色調を薄くすることが可能です。
また、顔の三叉神経領域にポートワイン母斑がある場合、脳や眼に異常を伴う「スタージ・ウェーバー症候群」の可能性があるため、MRIや眼科的検査などの精査が勧められます。
よくある質問
多くのあざは良性の皮膚変化や血管の拡張・色素沈着によるもので、必ずしも「病気」というわけではありません。ただし、ごく稀に遺伝性疾患や血管・神経の異常を伴うケースもあるため、気になる場合は皮膚科の診察を受けましょう。
基本的には皮膚科、特に小児皮膚科を標榜しているクリニックや病院での受診が適しています。赤あざのように血管の異常が関与するものでは、形成外科や血管腫の専門外来を紹介されることもあります。
生まれつきのあざ(先天性)は、胎児期の皮膚や血管、色素細胞の形成過程で起きる自然な変化によって発生します。原因は多くの場合不明ですが、遺伝とは関係ないことがほとんどです。一部のあざは成長とともに消えることもあるため、経過観察が基本となります。
あざの濃さにもよりますが、輪ゴムで強く弾かれるような痛みがあります。当院では、麻酔クリームや、麻酔のテープをご用意して痛みに配慮して行います。
あざの治療後は、1週間程度ガーゼ保護をしていただく場合が多く、その期間はプールや海水浴を控えていただく必要があります。また、レーザー後は紫外線に注意をしていただきたいため、日焼け止めを毎日塗るのが難しい露出部位は、真夏の期間は避けていただくことをお勧めします。
小さなお子様には、レーザーが目に当たらないように、お肌に優しい保護パッチを当てて行いますので、目に当たることはありません。
あざが、まぶたのふちまである場合や、広範囲で全身麻酔を必要とする場合は、総合病院にご紹介させていただきます。また、当院では赤あざに対して保険適応となるレーザーのご用意がありませんので、赤あざのレーザー治療は行っていません。
レーザー後色素脱失といい、強い照射を繰り返すことで白く抜けてしまうことがあります。
丁寧に毎回診察を行い、色素脱失が生じていないか確認しながら進めていきます。
レーザー後は、内出血、水疱、びらん、かゆみなどが起こることがあります。
また、扁平母斑などの茶あざは、レーザーで取り切れる可能性が低いあざのため、テスト照射としてあざの一部のみを照射して反応を見る場合があります。テスト照射で反応が悪く、悪化する可能性が高い場合は、全体の照射をお勧めしないことがあります。